リレー小説『渋谷ハチ公前連続昼寝事件』
今回は友人4人と私でリレー小説を書いてみました。
結果は以下のとおりです。ではどうぞ
『渋谷ハチ公前連続昼寝事件』
彼がハチ公前で昼寝を始めたのは、5日前のことだった。
渋谷に通勤する私は、昼休み駅前に出ることが多かった。
ある日、ハチ公前に目をやると、ホームレスのような格好の男性が寝ているのが見えた。別段変わった光景でもないし、さして気にもしなかった。男は私が昼食を食べ終わると、ハチ公前から消えていた。要するにお昼寝だ。
異変が起きたのは二日目だった。昨日、ホームレスの格好をしていた男が、貴婦人の女装をして全く同じ時間に昼寝をしていたのだ。前日のホームレスの格好はコスプレである可能性が高くなった。
月曜ホームレス、火曜貴婦人、水曜メタルっぽい服、木曜ジャージ、金曜和服…男は毎日衣装を変えて全く同じ時間に昼寝をしにやってきて、ただ昼寝をして消えていく。だんだんと気味が悪くなってきた。
今月は久々に土曜出勤だった。そして、いつものように、昼休みを迎えた。
今日もハチ公前にいってみるといつも通り彼はコスプレをして昼寝をしていた。
彼の今日のコスプレはスーツ...
スーツはコスプレなのかわからないが、いつもの彼の装いからして今日もコスプレなのだろうか。
いつもなら普段通り話しかけなどしないが、
土曜日でもハチ公前で当たり前のよう昼寝をしている彼に対し面白く感じてしまったのか、はたまた、いつも着ているようなコスプレ染みた服とは違い自分の格好と同じスーツのだったからなのか、気味悪く感じていた気持ちよりも興味が勝ってしまい、つい声をかけてしまった。
『休日出勤お疲れさまです』ニヤァ
と声をかけてみたものの、当然男は昼寝の真っ最中。起きるはずもない。「休日出勤、お疲れ様でぇす!」起きない。よほど深い眠りなのだろう。彼が何者なのかは気になって仕方がないが、無理に起こすのも気がひける、、。諦めてその場を去ろうとしたその時、私はある事に気がついてしまった。
会社を早めに抜けて、男の昼寝を終えるまで待って話しかければ良いのだと。私は上司に相談して会社を13時30分に退勤した。男が昼寝を終えるまでハチ公広場で待っていたが、男は一向に起きない。かれこれ一時間経っても男が起きる気配がしないので自宅へ帰ろうとしたその時、何とあのコスプレ変態昼寝男が目覚めたのである。私はその男に何故いつもハチ公前のベンチで毎日コスプレともいえる服装で昼寝するのか、その真相を突き止めようと質問した。すると男は不敵な笑みを浮かべて答えたのである。
「ゴミの日なんだ」
私は一瞬わけがわからず言葉が出なかった。
男はロボットのような動きで立ち上がるといつの間にか消えた。
わからなかった。男の言った言葉の意味が。
すっきりしないまま私はいつもの駅でいつもの電車に乗り込んだ。その瞬間、私は全てを理解して発狂した。
電車内はどよめき、駅員が駆けつけ電車は緊急停車して私は駅の事務所に連行されそうになったところを合気道で切り抜けて改札から脱出した。
「ゴミの日なんだ」
この言葉の意味を知った時、あまりの恐ろしさに私は自分自身の今までの人生を否定してしまった。
ハチ公前に自らコスプレをして横たわり寝る。この行為は自分がゴミであり回収されるのを待つと同時にコスプレの対象もまたゴミであるという認識を広めていたのだ。
この国はもう終わりだ。
私はカブールに飛ぶ決意をした。
缶
(LINEで募集したものをそのまま掲載・改変なし)
感想
文章を書くことの難しさを痛感。次回何か企画をやるときは俳句や川柳にしようかとも思いました。どこで書き手が変わっているかは意外とわかりやすいかも?